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俳句

2026.09.12

稲稔りゆつくり曇る山の国 廣瀬直人

稔り田です。こういう風景に出会うと日本人のDNAがどこからか呼び起こされるようです。
 

私の住んでいる日野市神明の丘。そこから櫟(くぬぎ)林の坂道を下りるとこんな景色が広がっています。引っ越してきた30年前は、住宅地はなく一面の田んぼでした。
 

櫟林には今もクワガタやカブトムシがたくさんいて、坂道の両側ではヒグラシが透き通る声で鳴き交わしています。私はこの坂道を「ひぐらし坂」と名づけました。
 

稲稔りゆつくり曇る山の国 廣瀬直人
 

父直人のこの句は、ふるさと甲府盆地の風景です。甲府盆地には、東郡(ひがしごおり)の桃や葡萄の果樹地帯もあれば、北杜市や南アルプス市がある西郡(にしごおり)には、八ヶ岳や南アルプスから清冽な水を生かした田んぼが広がります。
 

夕方になって甲府盆地は西郡の方から雲が広がってきました。そうゆっくりと。そして〈山の国〉はいつの間にか雲に覆われました。
 

甲府盆地の風土を大きくとらえて詠っています。風土とは、気候、自然、人の暮らし、社会、産業、経済、文化、芸術を含む、その地域を表わすすべてと言っていいでしょう。この句は、甲斐の國(山梨県)という山国の自然を詠っているように思われがちですが、包み込むような自然の内にある人の暮らしや社会が省略されて〈山の国〉に込められています。
 

こういう、大きく風土をとらえ、省略を効かせて、物や情景に気持ちを込めた句を作らせたら、直人の右に出る者はいないと思います。
 

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