
父直人は海軍兵学校最終期生。特攻隊として飛び立ってゆく先輩達のゼロ戦を何機も見送ったという。
飛び立ったゼロ戦は、上空で軽く翼を振り、会釈するように別れを告げて、南方へ飛び去って行ったそうだ。〈一期の別れ〉は、家族への、仲間への、ふるさとへの万感の思いを込めた最期の別れである。
直人は戦争の句をあまり作らなかった。帰還して風土詠に徹した。この句は直人の何れの句集にも収録されていない。
その時の情景だけを示し、気持ちを込めて読み手の想像に託す。俳句のという定型詩の力を感じる。「込めて述べず」と直人は良く言っていた。