
昭和21年の作です。葛西橋は東京都の江東区と江戸川区の間を流れる荒川と中川の河口部に架かっています。石田波郷は当時江東区の砂町に一家で暮らしていました。
戦後間もない時代です。前年の昭和20年には東京大空襲がありましたから、辺りはまだまだ焼け野原のような状態ではなかったでしょうか。橋は木造、もちろん湾岸道路などありません。
この句は、立春の日の葛西橋に米がこぼれていたという情景を切り取って、見たまま、ありのままに写生しています。
私はこの句から、新しい時代や未来への希望を感じとります。それは〈立春〉だから、真っ白な〈米〉だからです。その言葉の持つ意味と情景が読み手の感情に訴えるのです。
この句を読んでの感じ方は人それぞれだと思います。この句は情景のみを示して読み手の想像に委ねています。