『風の空』所収 平成十七年(2005年)作
「葛餅や」が郷愁を誘う
透明でぷるぷるとして冷えた食感が誠に夏である
甘い黒蜜ときな粉が絶妙な味わいを醸す
「冷やしといたからね」と言って、この季節になると、葛餅を出してくれたおばあちゃんの笑う顔を思いだす
掲句は鑑賞にもある通り、葛餅と雲の結びつきが絶妙
葛餅から雲を想像したか、雲から葛餅を想像したか
良く見て感じて創っている
「遠くなるほど雲眩し」は直人の主観。見事な描写力だ
いや直人の心眼がとらえた客観描写とも言える
季語から思い切って飛躍する詩性が直人俳句の本質
直人はこのことを「付かず離れず」「離れて戻る心」と言っていた
葛餅が無性に食べたくなった